中国人と言えば爆買い、爆買いと言えば中国人。そんなイメージが定着したのは、2015年に「爆買い」というワードが流行語大賞になってからでしょうか。

どうしてそんなに買うのか、どうしてそんなに買えるのか、これからも買い続けるのか?中国人の友人たちに、聞いてみました。

どうしてそんなに買うの?

彼らの答えは、「だってしょうがないじゃない!

と言うのも、中国人というのは家族や親戚の繋がりをとても大事にする人々なのです。儒教の考えが根底にあり、亡くなった先祖や年配の家族をとても敬い、大切にします。

親戚関係にしても、いとこ、はとこ、遠い親戚の子どもは「私の弟」「私の姉」と呼び合って、距離感がとても近いのも特徴です。親戚一同はわりと近くに住んでいて、子どもを預かったり、誰かが入院すればお世話に毎日通ったり、持ちつ持たれつで気兼ねのない関係です。

そんな密着した関係の中で、誰かが「日本に旅行に行って来ます!」となれば、自分の家族どころか、おじいちゃん、おばあちゃん、おばあちゃんのお姉さんとか、いとこの奥さん、お母さんのお友だち、お父さんの会社の上司など、その縁は果てしなく続き、30人40人から、お土産を頼まれるのです!

それも、炊飯器だとか湯沸かしポットだとか、けっこうな大きさの物をです!

「今回は買いきれないので、小さなお土産ですみません、と丁重にお断りしてはダメなの?」と聞くと、「断る事もできるけど、後が怖い」と。

なるほど。中国はコネ社会なので、その少しの事で、仮に縁が途絶えてしまった場合、後々それが息子の就職や、娘の大学受験にどう響くか、自分が大病を患って援助が必要な時、助けてもらえるか?そんな心配をしているのです。

だったら頼まれた分、全部買って来よう!となって、ショッピングカート何台分もの化粧品とか、「東京ばなな」50箱、と言った「爆買い」が生まれているようです。

あの「爆買い」の荷物の中に、当の本人が欲しい物ってどれ位あるんだろうかと思うと、少しかわいそうな気もします…。

東京ばなな_062716_025618_PM

そんな彼らに大人気の「東京ばなな」!のニセモノです。上海でよく見かけます。ニセモノなのに78元(1400円位)。値下げされても…やっぱり本物が欲しくなる気持ちが分かりますね。

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こちらは本物のロイズ。上海の正規店で売っている物です、が、お値段135元!(2400円位)日本では税込み778円なのに…。これも中国人観光客に人気のわけが分かります。

どうしてそんなに買えるの?

これは、お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、日本円と中国元のレートの関係でもあります。

2012年1月の時点では、1円=12元だったのが、2015年6月には1円=20元にまで中国元が値上がりしたのです。

この間に、日本を訪れる中国人が徐々に増えて行き、日本に行ったら今が買い時!とばかりに爆買いに走ったのです。中国人からすれば、日本の物が常に30〜40%引き!のような状態だったのですから当然ですね。

また、中国国内における不動産バブルもあります。特に上海では、2016年に入ってからも住宅価格は毎月平均3%の値上がりを見せています。これは、異常とも言えるほどの価格上昇で、例えば、家賃1ヶ月1万元(18万円位)で貸していたマンションが、翌年には1万4千元(25万円位)になるという事です。

ただ黙っているだけで、年間84万円位プラスになって行くのです!10部屋貸している大家さんだったら840万円のプラスです。マンションを借りている方は真っ青ですが、不動産を持っている大家さんはホクホクです。

そんなわけで、不動産を持っている中国人は、どんどん裕福になって行き、懐に余裕があると、安心で高品質な物を選ぶようになり、結果日本の物が爆発的に人気になったのです。

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さらに、爆買いを歓迎した日本政府が、免税対象を拡大した事も影響しているようです。

本来、家電製品や、宝飾品、靴やバッグだけだった免税対象が拡大し、2014年10月より食品、薬品、化粧品などの生活消耗品まで免税となりました。

ドンキホーテやドラッグストア、ホームセンターに中国人が押し寄せるようになったのはそれからです。

化粧水や目薬、オムツ、インスタントラーメン、サプリメントなど、安価で高品質な物が免税で買えるとあって、爆買いは中国人富裕層だけでなく、中流層の旅行者にまで波及しました。

爆買い…これから。

これからも中国人は爆買いを続けるのでしょうか。どうやらそうでもないように思います。

と言うのも、元の値上がりは2015年を境にストップし、その後、下落に転じました。2016年6月時点では1元=15円まで値を落としています。

そして、私の周辺の中国人たちの本音はと言うと「もう買いたくない」と、ため息と共にこぼしています。

これは、決して日本製品が嫌いになった訳ではなく、「せっかく日本に行くのだから、美味しい物を食べて、温泉に浸かって、ゆっくりしたい」のだそうです。

なんだか日本人みたいな事を言っていますね。それも分からないではありません。

上海に住む彼らは、バブルの真っ只中、経済激選区で日々闘い、地下鉄に乗れば盗まれる心配をし、タクシーに乗れば、わざと遠回りしてぼったくられる心配をし、PM2.5の渦の中では深呼吸もできず、食事をすれば、農薬混入の心配をして、心も身体もクッタクタなのです。

そんな彼らが、やっとの思いで数週間の休暇を取り、日本に脱出するのです。

きれいな空気を吸い、盗まれる心配をせず、美しい景色や美味しい食事をを堪能し、温泉にのんびり浸かって、日常を忘れたいと思うのも、当然かも知れません。

ところが、日本を訪れる中国人観光客は日に日に増え、銀座や京都、札幌などは中国人で溢れかえっています。

私の中国人の友人たちはウンザリしたように言います。「東京や北海道はもう、まるで中国だ。中国人のいない、日本の田舎に行きたい。アウトレットモールも、ドラッグストアも無くて良いから、ゆっくりできて、中国語の聞こえない、静かな所に連れて行って。」と。

結局ほしいのは、物ではなく癒し…

バブル時の日本を見ているようではありませんか?

日本の高度経済成長期にはブランド品を買い漁り、海外旅行がステイタスになり、海外でのマナーを知らなかった日本人観光客が、ヨーロッパや欧米で煙たがられていた時期もありました。

その後バブルがはじけて、高級志向は低価格、高品質志向に変わりました。健康志向ブーム、アロマブーム、風水ブーム、最近では猫ブーム……どれも、人々の疲れや不安が表れていたように思います。

現在の中国も然り。目まぐるしい経済成長と、大都市での気の休まらない生活は、中国人にとっても、きっとしんどい時があるのでしょう。

ぜひ日本の四季の美しい景色と、親切で優しい日本のおもてなしで、癒されて欲しいものです。中国人観光客のマナーの悪さに、辟易している方も少なくないと思います。ですが、彼らは日本に、ただ買い物をしに行っているのではありません。安心感や、心地良さを、そして癒しを求めに行っているのです。

そんな中国人の本音を知ってしまうと、今度中国人の団体を見かけても、「ようこそ日本へ。日本のおもてなしで、しっかり癒されて帰ってね」そんな気持ちで、微笑んであげたいと思うのでした。